2010/08/22

まったく一般的でない1ドル=360円の頃の話



山本直樹の『レッド』(1~4巻・講談社)を大人買いして一気に読む。
『レッド』は、1969年から1972年の日本を舞台に、革命を起こす事を目指した連合赤軍およびその母体となった2つの新左翼団体をモデルにしている。講談社の漫画雑誌『イブニング』にて隔号連載中(2010年08月現在、単行本は既刊4巻。以降続刊の予定である)

1969年から1972年というと、ぼくは小学校5年生から中学2年の頃の出来事だ。ぼくはこの時代のことを良く覚えている。この時代に吸収したものが今の自分を形成している。つげ義春に出会ったのもこの頃だ。

一気に読むのにじつはけっこう手間取る。
何人かの主要人物を軸に、時間的経過に沿って事件の進行や当時の時代背景が緻密に描写され、また、登場人物のその後の運命を示す文章が頻繁に登場したり、人物が亡くなっていく順に1から15までの番号が付されるなど山本流の緻密な描写の情報量が凄いのだ。

そして登場人物達のほぼ100%がヘビースモーカーなのに驚く。当時の日本人の喫煙人口は今とは比べ物にならないくらい多かったんだろう。ぼくのオヤジも「いこい」をバンバン吸っていたな。

登場人物達はみんな信じ難く若い。20~26歳だ。
すごい闘士集団ではないか。彼らの一回り上の世代がちょうどぼくの両親の世代になるし、その一回り上の世代になると戦争に行っている世代であり、日本の高度成長を支えた世代でもあるはずだ。
彼らにはクサるほど時間がありヒマだった? ぼくも若い頃はヒマだった?

フォト

1969年から1972年の若者を考える時、全く一般的ではないが、ぼくの中にリンクしてくるものが一つある。
Uコンって知ってますか?知らない人のほうが多いでしょう。紐つき(ワイヤーですが)
模型飛行機と言っても分らないでしょう。1969年から1972年当時爆発的に流行した遊びだ。ぼくもやりました。
「Uコン技術」(電波実験社・1979年12月号で休刊)という月刊誌も刊行されていて、これがかなりの部数売れていた。

この雑誌をいま開いてみる。
グラビアページを見ると各地の飛行会や競技会の写真が微笑ましい。9割の小中高生の野郎達と1割のトップモデラーが左翼の闘士たちの世代だ。大人達が全く登場しない模型雑誌はものすごく奇妙だ。

なんでこんなことを書いたのかと言うと、左翼の闘士たちとトップモデラーと称するマニア集団というかヲタク集団の違いは何か?ということを考えているからだ。もしかしたら同じ大学で同じ授業に出席していたかもしれない彼等の行動の分岐点を考えると眠れなくなる。

もう一度「Uコン技術」に話を戻すが、掲載されている海外の情報は驚くほど少ない。見開き2ページで提携していたエアロモデラーズ誌からのニュー スと設計図が掲載されているが、詳細を吟味するための情報があまりにも少ないので誰にも理解出来なかったのではないか?と推測する。
設計図に描かれた飛行機を作りたくても、特大のバルサブロックも超極薄航空ベニアなんて当時の日本で入手することは不可能なので作れない。
1ドル=360円。欧米はあまりにも遠かった時代の話だ。